Darkness world -ある捻くれ者のつぶやき-

成瀬香織です。私の幼少期からの出来事をエッセイ形式で書いていきます。(ちなみにこれは全て私の心理カウンセリングで使われたものです。虐待などの内容を含むため、閲覧にはご注意ください)

恐怖のバレンタインデー

正直職場でのバレンタインデーなど強制参加になる行事は大嫌いだ。というよりも生理的に受け付けない、と言ったほうが正しいかもしれない。

というのも、職場で同僚の男性社員の方に日ごろのお礼も~と言うものの、結局は全員で強制的にやらないといけないものでもあるからだ。まさに小学校のPTAと同じようなものである。正直そんなものは個人でお世話になった方々に渡せばいいのでは?とも思えて仕方がない。そもそも好きでもない相手にまで「バレンタインだから」といってチョコを渡せなんて死んでも嫌だ。無論それが女子社員全員で集金してそれで買って渡すとなっても自分自身が払ったうちの数パーセント分はその大嫌いな相手にも渡ってしまう、そう考えるだけで虫唾が走る。そしてホワイトデーにはその嫌いな相手も含む男性社員たちからのお礼が届く。本当に面倒で気持ちの悪いイベントでしかないと思う。

 

そんな私とは正反対で、このイベントに情熱を注ぐ先輩方がいるのも事実であった。やはりその方々たちが口を揃えて言うのは「日ごろのお礼。うちの伝統行事」。確かに日ごろのお礼は大事だが、そんなことだけで個人的に関係のない人まで巻き込んで日ごろのお礼などする必要があるのか無いのか・・・、悩むところである。最近ではこういうイベントは行わない企業も増えている。無論金銭的な負担を強いられることや、貰えた貰えないというようなものが背景にあるからだ。更には個人的にお礼としてチョコを渡す方もいるからでもあるだろう。それからホワイトデーのお礼もしないといけないというような事情も含まれているようだ。

だが、私のいた職場ではそれも普通に行われていたのだ。それも先輩たちが言うには「何年も続く伝統」というものでもあったのだ。昭和の雰囲気を引きずるその職場なら無理も無いのだが。

強制的に数千円単位のお金を集めて相手にチョコを無理矢理送りつけるようなこういう企画自体、伝統なんて単語で表現すること自体おこがましくも思えるが、やはり先輩たちはそれを大事に思っていたのだろう。だが私はどんな理由を付けられてもそんなものには参加したくなかった。面倒だからという理由もあるけれど、大嫌いな相手にも渡すということが死ぬほど嫌だからだ。それに強制的に集金までしてチョコを買って渡すことまで全て新人に押し付けるというのが許せないからだ。どうしてもやりたければやりたい人たちだけでやればいいのだ。それか部署ごとにすればいいのではないか・・・とも思う。それに宴会の幹事や毎朝のお茶汲みなどもしているうえにこれ以上「新人だから」という理由で何をしろというのか・・・。

この職場ではやはり昭和の雰囲気そのものだった。業務自体もそうだが、新人は宴会の幹事などのほかにも業務内で毎朝同じ部署のデスクを雑巾掛け、全員分のお茶汲み、しかも全員決まった湯のみがあってそれを覚えて配らないといけない。このお茶汲み自体、朝だけではなく昼休みのランチの時も先輩たちにお茶を出さないといけないというのも付いて回った。それから各営業所から届く書類や郵便物を分けるのも。本当に新人イコール雑用係というものが普通だった。それからお茶汲みも書類を分けるのも掃除をするのも、男性社員の吸うタバコの吸殻(当時はオフィスで普通にタバコを吸うのが当たり前だった)やその灰皿を洗うのも、実は女性社員の仕事だった。女性というだけで何でも雑用はしないといけない、それ自体「昭和」である。だからこそこのバレンタインも女性社員全員でとなるのだろう。

 

そんな中、入社2年目の私にそのバレンタイン係のお鉢が回ってきたのだ。前年は私より2年先に入社した先輩ふたりが集金からチョコを配るまでをやっていた。だが私の回は私ひとり。本当に厄介だし、それといった引継ぎもされなかったこともあり、更には入社した当初からこのイベント自体を毛嫌いしていたこともあり、私の回はやる気も起きなかった。「伝統」だというのなら先輩たちから引き継ぎがあってもおかしくない、だがそれも無い。それなのに「伝統」を語られるなんて、このイベントなんてその程度でしかないのだろうとまで思えたぐらいだ。

バレンタインが近づいたある昼休み、私は産休明けの同じ部署の先輩と話をしながらランチを取っていた。私の教育係をしていた先輩なのだが、産休明けてみたら前よりも穏やかな雰囲気になっており、以前よりも話がしやすかったので、よくランチで会うとその先輩とよく話をしていたものだ。そこで偶然にもその会社でもバレンタインの話が出てしまい、先輩からは「今年は私さんの番でしょ?」と言われてしまったのだ。しかし、私はその話が出るまで前年の先輩から何の話を聞いたわけでもなく、正式な引継ぎも行われていない。無論勝手など分かる筈もない。先輩には「引継ぎすらされていないので、私も正直どうすればいいのか、というところなのですが・・・」と言ってその場はごまかした。その心の中で私は「まだやってたんだ。正直私の時はやらずに終わってほしい」と思っていた。

けれど事態はこのままで済むはずもなく、仕切り屋のある別の先輩から直々に呼び止められてその社内でのバレンタインデーの贈り物がいかに重要かを語られてしまい、その日は渋々集金をして業務時間内に外出をしてチョコを買い、男性社員全員にチョコを配り歩いた。この日は連日の残業で疲れて風邪を引いて熱も出していたというのに、この要らぬ伝統行事のせいで遅い時間まで残業となってしまった。

 

そしてそれから一か月後、今度は男性社員側からのお礼と称してホワイトデーのギフトが配られていた。ここでもやはり男性社員側の新人がすべて取り仕切っているのかと思えば、そのひとつ先輩の社員とともに集金をして買い物に出かけてという状況だった。やはりこういう場面性別によっていろいろと違うものなのか?と思ってしまうぐらいだ。

 

前記のとおり、このようなカレンダーにある行事でも直接業務に関係が無いようなものは小学校のPTAと同じようなものではないのか?と思う。任意でもいいものをすべて強制にしてしまい、嫌がる人間を弱者に仕立て上げていじめるようなものである。そもそもPTAも社内のバレンタインデーも任意であるはずのものだ。これらのどちらにも共通するものだが、やはり仕切りたがる人間が必ずひとりいてその人の逆鱗に触れるようなことがあれば、仲間外れにされたりいじめられたり。無論その仕切りたがりがリーダーになることが多いので、リーダーに目を付けられたくないと周りは一生懸命リーダーの顔色を窺い気に入られようと必死になる。そしてリーダーが目の敵にした者は自分らの敵と言わんばかりにひどい仕打ちをするように・・・。いい加減にしてほしいものだ。

ちなみに昨今の社内バレンタインデー事情は、私のいた職場とは違い殆どその行事自体が無くなっているそうだ。というのもやはり金銭的負担だったり各々の人間関係が大きく影響しているようだ。加えてバレンタインデーに社内の女性からチョコレートを貰ったとしてもホワイトデーには必ずお礼をしなくてはいけない、そのお礼のギフトはチョコを貰った当人が選んで買うわけではなく大抵の場合奥様が選んで買うことが多いなど。ここでもやはり奥様のセンスが問われるなど、要らぬものがまた付いてくるわけで。それに社内で上層部が決めたものでもなく、社員が任意と言いながら強制で行うことも問題視されているなど。そもそもカレンダー上ではバレンタインデーはあるものの、社内で上層部が決めて全員がそうしないといけないものでもないこともあり、現在では業務外という扱いになっているという事情もあるようだ。

私は正直社内でのバレンタインデー強制の廃止には賛成だ。会社は仕事をしに来る場所であるので、このような業務に必要のないものはいらないからだ。どうしても個人的にお礼をしたいのであれば、個人でやればいいのだ。「みんなと一緒」なんて必要ない。