Darkness world -ある捻くれ者のつぶやき-

高坂はる香です。私の幼少期からの出来事をエッセイ形式で書いていきます。(ちなみにこれは全て私の心理カウンセリングで使われたものです。虐待などの内容を含むため、閲覧にはご注意ください)

強敵、現る!

入社3年目の年は今まで通っていた支社ではなく、最寄駅から電車で40分ほどの町にある営業所勤務になった。支社の仕事よりも営業所の方が厳しいとは聞いていたが、通勤のことを考えると私にとってはこれでよかったと思えた。上長からは今後の私の成長にもいいだろうとも言われた。そこでちょうどその営業所で内務の人間がひとり辞めることになっていたので、その後任という形で私はそこに赴任した。と、ここまではまだよかった。その年からは営業所の所長も新しく変わった。これがそこでも私の人生を大きく狂わせるものになってしまった。

 その所長はやり手であり仕事が出来る人であった。だが、人間性は本当におかしいとしか言いようが無いほど歪んでいた。今で言うパワハラ、セクハラは当たり前。見ていても聞いていても飽きることが無いほど完璧なオレ様っぷりを見せてくれたものだ。実は私の口からそう言ってしまうのも非常に心苦しいところである、だがこれ以外の表現が見つからないのも現状だ。だからここでは「完璧なオレ様」と表現しておこう。加えて人によって平気で態度を変える厄介な性格の持ち主だった。たとえば支社長や重役ポストにいる人間には常にへこへこしているが、自分よりも立場の低い人間に対しては横柄で更に言うなら横暴。本当にうんざりするほど面倒なタイプだった。それまでは厳しい人と人づてに聞いていたが、まさかその人の下で働くようになって心身ともに壊れるだなんて当時の私は想像も出来なかっただろう。

 

 まず、この所長(以下高倉)の前ではプライバシーが無いにも等しい。たとえば家族構成や預金残高などの個人情報から始まり、親しい友人の情報、そしてここからが厄介で付き合っている人がいればその人についても詳細を話せとうるさいから本当に嫌になる。そしてこの話をタチが悪いことに仕事中にしてくる。日常業務に支障をきたす・・・。これだけではない、新人や若い社員は必ずと言っていいほど、この所長の標的にされるのだ。というのも中堅社員、特に女子社員でもお局様レベルの女子社員や若くても主任の肩書きがある男性社員には絶対に手出しはしないのだ。無論その人たちに対しては陰口を言っても決して暴言は吐かない。では、新人や若い社員に対しては、というと・・・本当に耳を塞ぎたくなる、目を伏せたくなるほど酷いものだ。私の一年後輩の新人社員(男性)に対しては見るや面と向かって暴言を吐くというように、見ているこっちが辛くなるようなものだった。高倉から暴言を吐かれた新人社員の方は「あの人は仕事に厳しいから」というのみであり、何も事情を知らずに見ている者からすればかわいそうの一言に尽きるのだ。まさにブラック企業で働く社員のような感じだ。

 そして高倉の下で働くことになった私、言うまでもなく彼のストレス解消のはけ口(と言った方が正しいのかな・・・)のような・・・暴言の標的にされたのだ。

 

ある業務中の出来事である。私は新規の保険契約関連の仕事を担当しており、いつものように書類を手に取り不備がないか確認作業をしていた。その傍らで初回の保険料と領収書の控えを受け取って会計処理をしていた。だが、そういう場面でも高倉は私に「なぁお前、彼氏いるのか?」と質問をしてくる。私も最初は適当にあしらっていたのだが、10数分置きというぐらいに高倉は私に質問をしてくる。正直鬱陶しい・・・。そして質問に答えないと高倉はいきなり怒鳴りつけてくるのだ。無論私が質問にちゃんと答えるまでそれが続くのだから本当に質が悪い。ここでたとえば正直に答えたとしよう、近くにいる外交員のおば様たちにも言いふらされてしまうのだ。言うまでもなく私もその被害に遭っている。当時かりそめとは言え付き合っている人間はいたので、「いる」と答えている。だが高倉的には私に恋人がいるのかいないのかと、それだけが必要な情報ではない。恋人の名前だったりどういう職業なのか、どこに住んでいるのかなども必要なのだ。聞かれる側からすれば決して気分のいいものではない。己にはプライバシーというのが無いのか?と思えてしまう。さらには恋人の連絡先を教えろだのと言い出す始末、何をしたかったのだろう。いまだに謎である。

また別の日には「恋人の写真見せろ」と始まったのだ。高倉という男が本当に何を求めてそのような行動に出ているのか、ますます分からなくなった。半ばうんざりし始めている私は適当に恋人の写真を見せておいた。とりあえず「かりそめ」だしと、本当にそういう気持ちでしかなかった。その後どうなるのか、当時の私はまだ知る由もなかった・・・。

 

「写真見せろ」事件から数日後、出社したら高倉がいた。いつもは就業時間ギリギリに来るのだが、この日は珍しく早い出社だったのだ。

「おはようございます」

といつもと変わらない挨拶を済ませる。高倉も挨拶をするのか?と思っていたが、高倉の口から出たのは

「お前の彼氏、バカなんじゃねぇの?頭悪そうな顔してんもんなー」

などと明らかにバカにしたような発言を、薄ら笑いも付いてしてきたのだ。それだけではなく、支社にいる課長や支社長などにもこの話はいつの間にか言いふらされてしまい、誰もが知る一件となってしまったのだ。だから支社長や課長が私のいる営業所に来ると必ずといっていいほど私に彼らは「彼氏いるんだって?」などと平気で質問をしてくる。ここでも最初は適当にあしらっていたのだが、何度も同じことをされているとげんなりするものだ。だが、それだけでは終わらなかった。

 

ある日のこと。その日は遅くまで残業をしていた。そこで高倉は私と主任を食事に誘ってきた。この日は支社から別の主任が来ていたこともあって普通に居酒屋に出かけた。居酒屋までは少し離れているということもあって、この日はタクシーで移動することになった。その道中、私は終電で帰ると自宅に連絡を入れたのだが、こともあろうか高倉は私の手から携帯を取り上げて私の母にいきなり挨拶をし始めた。

一瞬のことで私は混乱した。高倉曰く一度両親に挨拶をしたいとのことだった。そもそも私はこの時点で成人しているうえになぜ両親に挨拶なのか、理解できずにいた。高倉曰く「昔いた営業所にいた事務員が問題起こしてそれで俺はその厄介ごとに巻き込まれた。だから俺としては事務員の情報を把握しておく必要がある!」というのだ。

それは私が厄介ごとを引き起こす前提だということなのか?高倉の行動は確かに一理あるのかもしれない、だが、「いち事務員の情報を把握する」にしては度が過ぎているとしか思えない。というのも私のいた営業所にはもう一人事務員がいるのだが、彼女の情報は私ほど聞いていないからだ。少なくとももうひとりの事務員の方は独身であったが当時40歳近くで副主任という肩書があったからなのか彼にとって私ほど興味のある人物ではなかったのだろう。だから彼女の情報は住んでいる場所ぐらいしか把握していなかったはずである。無論私に対しても把握する情報をそれぐらいにとどめておいてもらえれば私も高倉をここまで嫌わずに済んだと思う。

実は高倉は、自身が赴任してきた最初の日に私と事務員にギフトを持って挨拶をしていた。ここまでは普通にありがちな場面である。主任には特に何も言わなかったのだが、私には「嫌いにならないでね」と言ってきた。いったいこれはどういう意味なのだろう?と当時の私は考えていたが、それがその数か月後になって現実のものになってしまった。

高倉の元で働くようになって2か月強、私の中で彼は本当に大嫌いな人間になっていた。そして同じ空間にいるのも嫌になり、業務に支障が出るようにもなってしまった上に過食に走るようになってしまった。無意識のうちに食べるようになり、そのあとにはトイレで吐くという行動が出てくるようになっていた。無論生理も止まり、肌もボロボロになっていった。そして毎朝高倉を含む同じ事務所内の人間にお茶を淹れていたのだが、高倉にお茶を出す時には私は彼を無意識ににらみつけたり表情がなくなっていった。ひどいときには舌打ちもするようになっていった。もちろん高倉もこれに気づいて私を咎めるのだが、私は彼の相手をするのも負担になっていたこともあり、次第に犯行するようになった。たとえば「それって暴言じゃないんですか?」だったり「高倉さん、あなた横暴なんですよ。これじゃ私があなたを心底嫌いになるのも時間の問題ですよ」など、心の声が現実の声となって私の口から繰り出されていくのだ。しまいには「セクハラで訴えますよ」とまで。

不運にも当時私のいた会社では女性の立場は本当に弱いもので、そのせいもあってかセクハラやモラハラなどを相談する部署など無かった。そのために私はどんなに高倉らからひどいことを言われても結局は自分の中で押し殺して、言われることされることに対しては歯を食いしばって耐えるしかなかった。だが結果的にはそれは私の身も心もボロボロにすることとなった。

過食や反抗だけならまだしも、最終的には職場のトイレでリストカットも繰り返すようになっていった。それもわざと目立つような場所にナイフで傷をつけるというようなことの繰り返し。それだけじゃなく、ある休日にそれまでは左右の耳にひとつずつしか開いていなかったはずのピアスが1つずつ増えていった。自分で開けることも考えたが、こればかりは病院でちゃんと開けたが・・・。この行動は高倉以外の目には普通に見えていたようだ。

そんなある日私の同期でもある主任(こちらは旧帝大卒で私よりも年上)と話をする場面があった。そこで書類を手にする私の手首に彼は目が行ったようで

「私さん、その傷どうかしたの?」

と聞いてきた。そこで私は正直にリストカットをしていることを告白したのだ。その時の私は

「こうしていると、落ち着く」

と何の躊躇もなく言った。けれど主任は私を責めるわけでもなく問い詰めるわけでもなく

「実は前から気づいていた。明らかにここに来た時より顔色も悪いし、それに目つきも変わった。笑い方だって全然違うし、あとは腕とかに傷があって、それが増えていっているだろう?まさかとは思ったけど・・・やはり」

と言って口を噤んだ。その後私は何を言ってどうなったかまでは覚えていないが、その後どこからかそれが高倉の耳に入ったことは覚えている。

 

そんな中高倉が突然私を呼び出した。私は一体何が?という思いというよりは今度は密室でセクハラでもされるのかと思い、身構えたまま高倉の待つ会議室へ向かった。会議室に入るや高倉は私に

「手首を見せろ」

と言ってきた。正直ここでもセクハラするんだろう!と私は思っていたが、そこで普通に私は手首を見せた。すると

「ああ、これだな。お前、そういう考えをしていたのか」

と高倉は突然口を開いた。私は半分拍子抜けして

「それは、どういう意味ですか?」

と聞き返した。

「自殺なんて考えちゃいけない、たとえ辛いと思ってもそれだけはダメだ」

と、今までの高倉じゃないような発言をした。だが私は彼に気を許すつもりはなく、ずっと警戒していた。

「自殺ですか?そんなこと全然考えてませんけど」

「じゃあなぜ手首を切るような真似をするんだ?」

「癒されるからです」

その後結局口論となってしまった。正直そんな事はどうでもいい、と思っていた。だが、やはり高倉自身も私の異常には気づいていたのかもしれない、それもこんな見た目ですぐに分かるような形で。

 

その数日後である週末、主任は私を突然食事に誘ってきた。断る理由などないので、主任と食事へ行くことにした。そして会社近くの居酒屋に到着すると、支社時代の後輩がひとり席で待っていた。そこに合流する形で酒を飲みながら食事をすることに。主任曰く最近の私の様子がおかしいことにはだいぶ前から気づいていたが、自分ではどうすることも出来ないし社内であれば尚更ということで、後輩とともにこの日の飲み会を設定したのだそう。無論私には内緒で。普段は高倉に散々な目に遭わされていても味方は実は近くにいた、そう思うと心底安心できるものであった。

 

 正直私はどんな立場にある者でも「オレ様」キャラが苦手、むしろ大嫌い。弱いものに対して威張り散らして強いものに対しては・・・、となると本当に受け付けない。生理的に無理である。