Darkness world -ある捻くれ者のつぶやき-

成瀬香織です。私の幼少期からの出来事をエッセイ形式で書いていきます。(ちなみにこれは全て私の心理カウンセリングで使われたものです。虐待などの内容を含むため、閲覧にはご注意ください)

お金にまつわる話

子供にとって年1回のお楽しみ、それは「お年玉」。小学生になってお金の使い方や金額も分かってくると余計に嬉しくなるものだ。

そして貰ったお年玉で普段出来ないようなお買い物をする。大人になってからそれを見ても「ああ、子供のお小遣い程度で買うものだもの」と思っても子供にとっては本当にぜいたく品である。だが、全ては大抵使わない。じゃあ残ったお年玉は?というと・・・それも大抵親に「貯金をするから。将来のためだから」という名目で強制的に没収されてしまうのである。我が家も例外ではなかった。本当に「将来のために預金」してくれていて将来返してくれたのなら嬉しいものであり、当事者である私たちも親に心から感謝できるものである。だが、全てそうではなかった。そもそも子供名義のお金である以上、親であっても子供の許可を得ずに勝手に使うなど言語道断だ。

実はそんな事件が我が家でも起きていたのだ。小学校1、2年生ごろまでは特に「貯金する」という話は無かったのだが、3年生の正月にもらったお年玉は手元に5千円残すのみで残額は母が郵便局に貯金すると言い私と兄から奪ってそれを貯金したのだ。郵便局に作った通帳の名義は私のものと兄のもののふたつ。ここまでなら何の問題も無いのだが、問題はこの先。小学校6年生の頃のお年玉まで母に預けていたのを覚えている。結構な額の貯金があったと思われる。そして母は「中学に入ったらお金もかかるから、必要なものがあればここから下ろして使うようにする」と宣言。表面上はもっともらしいことを言っていると思う。だが、いざ私がお金が必要になった時に母に自分名義の口座からお金を下ろして欲しいと懇願しても「あれはあんたの金じゃない。あたしが貯めてやってるやつだ!だからお前にあげる必要は無い!」と言い出す始末。無論私もそれはわざわざ私たち兄妹を郵便局に連れて行って口座を作ったものだろう。そして預金したものも小学生の頃にもらったお年玉だろう!と言うが、母は決まって「そんなもの無い!」とシラを切る始末だ。本気で認知症にでもなったのか?と思えてしまったぐらいだ。そして母はその話になるといつも必死に「お年玉なんて知らない!あんたたち名義の口座は私が勝手に作っただけだ!」と言い訳をするのだ。明らかに怪しい・・・、幼い私でもそう思わないはずが無い。

その口座の話は結局私が社会人になる少し前ぐらいまで続いた。私が社会人になる少し前に母にこの口座のことを問いただしたのだ。すると母は「大きくなったら渡すなんて言ってない!あの口座はお母さん自身のためにはる香の名義を借りて口座を作っただけでお年玉を預かった覚えは無い」と平気で言い放ったのだ。私がどれだけ抗議しても預けたお年玉は返ってくることは無かった。

高校の頃のバイト代についても厳しくチェックされたものだ。母からはしきりに「えぇと、時給は600円で一日○時間、今月は○日働いたから・・・、これぐらいは貰ってるでしょ?」と私に言うのだ。あくまでバイト代はお小遣い稼ぎのためにやっていたこともあり、そこまで母の干渉の範囲ではないと私は考えていたため、バイト代については特に触れるつもりもなかったし、母にいちいち報告する気もなかった。だが母は私がきちんと答えるまで問いただす。母にそれが「無駄遣い」と判断されればそこから説教をされるというものだった。正直うんざりだった。両親から満足にお小遣いももらえないという不満からバイトをしていただけであり、そこで稼いだお金のことまで触れて欲しくなかったからだ。個人的にはバイトをして私自身が稼いだものである以上、小遣い帳をつけるなりして自身の稼ぎを管理するのが筋だと考えていた。だがそこにも母からの干渉が入る。そして

「使いすぎ、無駄遣い!」

「これから修学旅行のお金だってかかるのに、また無駄遣いしやがって!」

などと難癖をつけてくる。確かに修学旅行で使うお小遣いを稼ぐ子もいるだろう。だが私はそれ以前に友人と同じような環境になりたいと願っていたこともあった。事実両親は兄の願いは何でも聞くという変なスタンスであったため、私はいつも後回しにするか私の分は無し。良くても兄は性能もよく値段も高いものだったりブランド物で、私は安物だったりセール品。無論ブランドなんて無かったり。だからそのような親のスタンスに賛同出来ずバイトを無理矢理始めたこともあったから余計に母に干渉されたくなかった。バイトで稼いだお金は友人との交際費や好きな服を買うために使った。だが、ここからがまた地獄、修学旅行のお小遣いは1万円しか渡されなかったのだ。母曰く「お兄ちゃんは一人で暮らしているからもちろん多く渡した。けどあんたは実家にいるんだし、そんなに苦労してないんだから1万円で充分でしょ?それにバイト代だって無駄遣いしているんだから!そんな子にはお金は渡せない」と。ここでももっともらしいことを言っているが、やはり納得できない。

普段私は友人と同じような生活を送れていない、買ってもらえる服や靴だっていつもセール品や時代遅れのもの、そして満足なお小遣いも貰えない、その中で楽しい生活をするために自分で稼いだお金を欲しいものにつぎ込んで何が悪い!それが私の言い分だった。お小遣いが足りないという理由で友達と遊びに行くことや合コンへの参加も何度も断っていた。はっきり言って苦痛だった。そんな状況を知ってか知らぬか両親揃っていつも

「お兄ちゃんを引き合いに出すなんてお前は甘えている!お兄ちゃんは一人暮らしをしているから生活費をあげている。だけどお前は実家にいるんだからそんなに小遣いはいらない!世の中を舐めるな!」

などと理不尽なことを言い出す始末。別に平等にしろとは言わない。せめて両親が兄との差を付けないようにしていればこんな風にならなかったと今でも思う。

 

今だから言う、「お前らみたいな両親のもとに産まれて冷遇されているんだから自分の力で何とかしようと動いて何が悪い!」。

 

社会人になってからも母からお金についての干渉が止むことは無かった。むしろ恥ずかしいぐらいに酷くなった。自慢するわけではないが、私は20歳にして150万円近い貯蓄があった。高卒の一般企業勤めでよくやったと感心する・・・、いや感心するには程遠いが。実はその裏側は母親が半ば私の稼ぎ(月収および賞与)から預金金額を勝手に決めてむしり取るようにして搾取、そして母名義の貯蓄に回していたという事情もあった。口座の名義人は母名義。一般論で考えてもここで既に可笑しい・・・。母は考えなかったのだろうか。自身の身に万が一の事態が起きた場合、それが私の稼ぎであっても口座が母名義である以上私の手元には預金額の全額が戻らないということを(たとえその口座が私名義であっても母が管理をしていればそうなってしまうけど)。法律上その口座が私名義であっても実際に管理をしているのが母であれば母の財産とみなされて、財産分与の対象になってしまうのである。

私が就職をして預金を始めた時点で既に「稼ぐのは私であり、貯めるのは母」という奇妙な構図が出来上がっていた。無論私は納得できるはずもなく、母に何度も「会社の社内預金に預けるから今まで渡した分を返して欲しい。仕事をして稼いでいるのは私なんだから口座を自分で作って自分で貯める」と言っていたのだが、母は「あんたの将来を思って貯めてあげているんだから返せない。それに私はあんたを信用できないから」などと言って搾取した分は返してくれることは無かった。前記のとおり前科もあるので実際私から受け取った金額すべてを貯蓄していたのか、それすら分からない。恐らく自身のお金の都合が悪くなれば私の預金に手をつけていたとも思われる。というのも、私がある日帰宅したときに母が「あ、きょうね、あんたの口座から○○万円借りたから。そのうち返しておくね」などという信じられない事後報告が何度かあったのだ。おまけに通帳の内容も見せてもらえなかった。それなのに当時の私は本当に世間知らずのバカだったのか、借用書を作ってすべて管理するということもせずにいた。今思えばいくら私の預金を母が管理していたとはいえせめて借用書ぐらい作っておくべきだったと思う。母が勝手に私の口座に手をつけた分が本当にそのまま口座に戻ったのかも、今となればそれも非常に疑わしい。そもそも母に言われるがままにお金を渡していたこと事態、間違いだった。この時点で私の衣食住、そして財産まで母親に握られてしまったのだ。一人暮らしは禁止、実家に住まわせてやる、三食は出してやる、などといった上から目線。そこに今度は搾取も加わる。そこまでして両親(特に母)は私を自身の手元に置いておきたかったのだろう。

それだけではなく母は私のお金の管理方法や使用用途については異常にうるさかった。時には銀行のATMにまで着いて来た。そして私にあれこれと指示を出したかと思えば、母に渡す分を増やすように言われたりと。言うまでも無くこの母の行動を気持ち悪く思えてきた。しまいには社内預金分や財形貯蓄分も母の管理下に置きたかったのか、それらの分も解約をして毎月家に入れろという始末でもあった。さすがにこれだけは私も引き下がることはなかった。実は私の方も母に内緒で毎月の給与や賞与から社内預金や財形貯蓄に回していた分はあり、物入りの時にはそちらを切り崩していた。というのも母に「いついつまでに○○円が必要だから口座から下ろしてほしい」と言っても母は自身の管理する私の口座からお金を引き出すことを許さなかったからだ。わざわざ使用用途を確認しては、あれはダメ、これはダメと繰り返し、母が気に入らなければお金を用意してくれない。うんざりだったからだ。

 

私名義のお金の全て、この時点でもしかしたら母のものになっていたのかもしれない・・・、そう言ってもおかしくない。母の干渉の対象になるのは私の稼ぎだけではなかったからだ。たとえば成人式。私は最初から成人式をやるつもりが無かったので、ずっと頑なに「やらない」と言っていた。というのも両親が兄の時にはお金もかけて盛大にやっていたのにいざ私の番になってみたら「やるんだったら勝手にどうぞ。こっちはお金も出さないしお祝いもしない」と言っていた為である。だから私は成人式をやると決まる前まで「成人式のたった一日のために多額のお金を使うなら・・・以前から興味のあったスキューバダイビングのライセンスを取るためにグアムへ旅行しよう」と思っていたのだ。

だがある日突然母が「成人式は親戚の顔もあるからやってほしい。他の子はやっててあんただけやらないとなると・・・」とお願いしてきた。私はここでも「やらない」とつっぱねた。だが母も必死で「衣装代とかはこっちで全部出すから」と言ってきた。結果本当はやりたくなかったのだが、仕方なく成人式をやることにした。

私はここで母に条件を出した。「着物はレンタルでいいけれど振袖は着ない。着物は私が一から全部選ぶ、それが出来ないならやりません」と。母はその条件を飲んでくれた。結局中振袖と袴をレンタルし、美容院で髪型も決めてセットしてもらい、地元の成人式に出ることになった。親戚たちからの祝儀も私宛に届いたのだ。だが母は私が貰ったご祝儀は全て私から取り上げたうえに、その中から衣装代(家計から払うと言っていたくせに)も支払っていたうえに内祝も勝手に決めて買って親戚に配っていた。内祝についても勤務先近くの百貨店に一括で頼もうかと考えていたのだが、それを母に話したところ「あんたには任せるわけにいかない。親戚にやるものなのに!あんたが選んだらろくなものしか選ばないに決まっている!」と半ば決め付けで猛反対されてしまった。祝儀からは袴に合わせるために買った編み上げブーツ代として1万円しかもらえなかった、それも母から投げるように渡されて。ちなみに私が買ったブーツは25,000円だった。肝心な祝儀の残金は両親が勝手に遊興費として使っていたことが後に発覚。収支報告も無く、それを聞いたときにはさすがに呆れて何も言えなかった。ちなみに兄の時には数十万円するブランド物のスーツを買い与えた上に兄宛のご祝儀は本人に全て渡していた。母親曰く「兄は一人暮らしでお金がかかるから仕方ない」。私個人の考えではもう成人しているわけなので、祝儀の管理およびお返しは貰った本人がするものである。そして私もそのつもりだったため、自分で手配をしようと百貨店に掛け合ったり職場の先輩に相談したりしていたのだ。それが母がしゃしゃり出てきて面倒なことになったのだ。

 

成人式から数ヶ月後、私は最初に勤めていた会社を辞めて地元に就職をした。再就職をした先は正社員でブライダル業の事務員。収入も安定していたし、特に不自由は無かった。だがそんなある日、突然母にあることを告げられたのだ。

 

「お父さんの知っている人にお金を貸すことになったの。それでね、あんたの口座からも100万円貸してほしいの。返ってきたらちゃんと5万円つけて返すから」

 

私は耳を疑った。なぜ私のお金から?そして父の知人って誰?私その人に会ったことも無いし・・・。それに父は一体いくら貸すというのだ?金額も100万円・・・。決して安い金額でもなく、「あげるつもりで貸す」ことなんて簡単に出来る金額じゃない!

さすがにそれには私も冷静になり「そんな全く私とは関係のない、見たことも会ったこともない人にそんな高額なお金は貸せない。いくらお母さんが私のお金を管理しているからといっても納得なんて出来ない」とお金を貸すことを拒否した。だが母は「お父さんの面子もあるんだからそこを何とか・・・」と食い下がり、それでも拒否をする私に対して「100万円だけなんだから、ほんの数日貸すだけなんだから何とかしてよ」とまた食い下がる。本当に嫌になった。前に勤めていたところの所長がよく言っていた「金が絡むと、どんなに良い人でも人格が変わる」、まさか私自身の肉親にそんな人がいたとは・・・と本気で思えてしまった。結局母は父の面子や体裁を守るために私を利用したのだ。そこで私は母に「こんな事ならもう私のお金の管理はしなくて結構!うちの会社の取引先の銀行にすべてを任せる。そこには私の知人だっている!だからそっちの方が信用できる。今まで渡したお金を全額すぐに返しなさい!」と言ったが、母は「そんなことは出来ない!誰のおかげで飯が食えていると思っているの?お父さんが一生懸命働いているからあなたたちは教育も受けられて、そしてこうして家に住めているんじゃないの?だから100万円ぐらいいいでしょ?」など理不尽な持論を展開する始末。それでも私はその借金を断り続けた。だが話はここで終わらなかった。翌日、会社に出勤していつもどおり仕事をしていると、携帯に着信があった。母からだった。出てみると、開口一番に「100万円の件、いまから銀行に行って下ろしてくる!あんたに言っても無駄だからお金は下ろしてお父さんに渡すからね!」と。私は待つように言ったが、母はほぼ発狂した状態で「お父さんを困らせるの?家族でしょう?これはお父さんの仕事が絡んでるの!それでもあんたはお金を貸してくれないの?別に100万円くれって言っているわけじゃないのに、ちゃんと返すときは5万円つけてあげるって言ってるんだから貸しなさいよ!今貸さないって言うんだったらお母さんはあんたを一生恨む!今すぐにでもアンタを殺す!」と私に要求してくるのだ。母の要求は半ば狂言染みた物言い、いや、もはや私に対する脅迫になっていた精神的にもさすがに追い詰められて正常な判断が出来なくなってしまったのか、私は母に従うことになってしまったのだ。仕事中にこのような電話をもらって私も迷惑だった。実際この時、来客対応をしていた最中だった。この出来事を目撃した上司には不審に思われる、先輩にはこの件で「勤務中に私用の電話は慎め!」と怒られるわで本当に凹んだ。

 

その日帰宅しても母はこの100万円のことは自分から何も言おうとしなかった。そこで私は「100万円、下ろしたの?」と母に訊ねた。すると母は「下ろしたよ!ありがとねー!」などと申し訳無いという気持ちは一切無いような能天気な返事が返ってきて私はとても落胆した。

 私は父の稼ぎが良いことを知っていた。兄も当時奨学金などにたよらず親のお金で理系の私立大学に通っていたぐらいだから我が家は「娘に頼らないと生きていけない」ような台所事情ではなかったはずだ。事実兄には惜しみなくお金を使っている。アパートでの一人暮らしだってさせている。当時の最先端の家電や新品の自転車だって高校入学時に買い与えて、車も携帯も大学入学時に買い与えている。極めつけは両親揃って「あんたもレベルを気にしなければ大学に行かせるぐらい、出来たのにね。私立なら馬鹿でも入れる学校なんてなんぼでもあったのに、お金さえ積めば入れたのにねー、アハハ!」と何度もしつこいぐらいに私に言っていた。家にはお金はあることを匂わせる発言、兄には惜しみなくお金をかける、それなのに娘の預金にまで手をつける?しかも高額な金額を・・・。それも全ては両親の都合。すでに成人している私はそんな両親の都合に振り回される必要があったのだろうか。恐らく両親は「もしここで素直に家の預金からお金を貸して返ってこなかったらどうしよう。だったら100万円だけでも娘に肩代わりしてもらえばいい!」とでも思ったのだろう、今更事の真相を両親に確認するつもりも無いが・・・。自分たちの始末は自分たちでしてもらいたいものだ。両親揃って無いものは無い!と言うことも出来たはず・・・。時にはそのような勇気も必要だ。それに本当に自分らの娘のことを思うなら娘にお金を貸して!などと言えるはずもないだろう。社会人になって自分でお金を稼いでいるのだから迷惑はかけられないというのが本当の愛情だと私は思う。

この借金騒動は1度だけでは終わらなかった。その数週間後にまた同じように母は私に「100万円貸して!」と言ってきたのだ、悪びれる様子も申し訳無いという様子も無く当たり前のように。実は前回のお金が戻ってきたかどうかもこの時点でははっきりしていない。母もこの時点で私にそのような報告もしていない。本当に100万円に5万円を足した金額がそのまま私の口座に入ったのかも不明であった。それに自分たちの事情なのに私がなぜ関与しなければいけないのか、そういうはっきりした理由も明かしてくれないこともあって今回は絶対に貸さない!と意思表示をした。加えて「もし勝手に引き出そうものなら、詐欺罪で警察に突き出す!」と母に言い放った。だがここでも母はすんなり受け入れてくれるはずもなく、「ここで貸してくれないと家が破産する!」だの「会社が不渡りを出さなきゃいけなくなる」だの言い始め、更には「前と同じ人に貸すだけなの!この間だってちゃんと返してくれたから今回も」と言うのだ。私は驚いたというか、驚きと怒りを通り越して母にも父にもその父に知人にも呆れた。なぜノンバンクとも言えない一般の知人からお金を借りようとするのか?恐らくその父の知人とやらは銀行や消費者金融から金を借りられない状態なのだろう・・・と簡単に想像は付いた。そんな人に普通大金を貸すものだろうか、さすがにこれはあり得ない。無論銀行や消費者金融からも貸してもらえないような人が借りた金をすんなり返してくれるとも思わない。もうこの時点で既に母のしていることは今で言う「振り込め詐欺」のようなものだろう。私は「自分たちで何とかして」と静かに言いはなったのだが、母は「そうか、家が破産してもお父さんの会社が潰れてもあんたは平気で警察に私たちを突き出せるんだ」とヘラヘラして言い返してくる。「100万円貸してお父さんの面子が守れるんだからそれでいいじゃない!」とも言ってきた。それでも私は頑なに断るが「あんた、親を見捨てるの?育ててやってるのに」「実家にいさせてやってるのに(そもそも実家にいろと強要してるのはあなたたちでしょ?)」と散々恩着せがましい事を言って催促してくるのだ。だが今回は無視することに。

しかし翌日になって母は「あ、100万円おろしたから!」と悪びれずに言ってきたのだ。強行されてしまった、さすがにこうなればもう実母でも犯罪は犯罪。警察に突き出すしかないと思い、私は母に「じゃあ警察に行こうか!前にも言ったよね?『勝手に引き出そうものなら詐欺罪で警察に突き出す』ってね!」と言い母の手を引いて玄関に移動しようとすると、母は突然泣き喚き「お母さんは何も悪くない!あんたがお金貸してくれないからこうなるんでしょ!素直に貸してくれればこんな事にならなかったのに!お金を何も言わずに貸してくれないあんたが悪いの!」と開き直って叫びだした。そして暴れて私の手を振りほどいて私を突き飛ばしてリビングに逃げたのだ。この後どうなったのかは怒りのせいなのか私もあまり覚えていないが、相当揉めたことだけははっきりしている。

後日、私は母に

「あの時はどうしてもお金を貸したくなかった。お母さんは100万円貸してって簡単に言ったけど実際100万円稼いで貯めるのにどれだけの労力が必要なのか、あなたにはそれが分からないから軽々しく「100万円貸して!」と言えたんだよね?そもそも銀行とか消費者金融からお金を借りられないから父に頼ってきた人でしょ?そんな人にホイホイ貸しちゃうってあり得ない。私さぁ、この一件で私はお母さんにお金を管理してもらうのが怖くなったし、信用できなくなった。だから口座を今すぐ解約して私が毎月渡していたお金も返して欲しい」

と言った。すると母は

「あんたはお父さんのこともお母さんのことも信用してないんだね。お金だってちゃんと返したのに、5万円もつけたのにさぁ。それでも信用してくれないんだ」

「こっちだって言われるがままにホイホイ貸したわけじゃない!」

から始まって最後は

「お父さんがいるからこそ、こうしてあなたたちは生きていけているのに・・・」

とまで。

私個人の意見としては「自分の尻ぐらい自分で拭え!たとえそれが家族でも」というのは妥当であると考える。それに実際にお金を貸してほしいと申し出を受けたのも父自身である。借金したいと申し出た人間も私は全く知らない、面識の無い人間である。それなのによく関係のない私を巻き込めるものだな、と思えてしまったぐらいだ。今思えば母も本当に愚かである。「一家の長である父が言うことは絶対」という昔ながらの考えをそのまま引きずって現代を生きていたのだ。無論その考えの向く方向が母と父だけならまだいい、私を巻き込むことを当たり前だと思う母の思考が私には考えられない。時代が変われば考えも変わる、昔の考えや習慣すべてが「古き良きもの」でもない。女に学は必要ない、女の稼ぎは全て家に入れろ、女の稼ぎは親が管理などと言うこと、そんなものは言語道断(加えて言うなら結婚まで実家住まい、恋愛禁止、親の決めた相手でなければ結婚させないなども)。女性たりとも仕事をして生活をしていかなくてはならない、仕事をしなければ生活なんて出来ない。学がなければ仕事も出来ないわけで、その先は言うまでもない。無論稼ぐだけじゃなく貯蓄をすることも大事である。今回はその貯蓄を牛耳られ、勝手に利用されてしまったのだ。娘自身の人生だけじゃなく娘自身が働いて稼いだお金を牛耳り、自身の手元にあることをいい事に「使っても返せばいい」という身勝手な考えでいること事態、本当に哀れでならない。そんな好き勝手ばかりする両親が私の両親だということを心底情けなく思う。

 

この後もずっと母は私の稼ぎを牛耳ろうと必死だった。口座も未だに返してもらっていない。何としてでも私の稼ぎの一部は自分の懐に入れておきたかったのだろう・・・「将来の娘のために貯蓄してやってるの!そんなお母さんって偉い!」という自己満足だけで。

この借金騒動の時に勤めていた会社は、その後自主廃業してしまった。そこで再就職先を探す私が医療事務の資格を取ろうと勉強をし始めたのだ。学校にも通い、受講料も8万円ほど母の管理する口座からなんとか下ろしてもらい支払った。そこで父が一言私にこう言った。

「医療事務の資格、一発で合格したら受講料は出してやるぞ!」と。母もそれを聞いていた。

私はその後一発合格をした。だが父も母も受講料分のお金は私にくれなかった。そこで私は

「そういえば、一発合格したら受講料は払ってくれるって言ってたよね?」

と両親に訊ねた。すると母が

「その間こっちはあんたの生活費全部出してあげたんだから、払わないでいいでしょ?」

と信じられないことを言い出したのだ。私は明らかに約束が違うと言い「約束は約束でしょ?」と母を問い詰めると、

「だってこっちだってそれなりの金額出しているんだからおあいこ!」

とまたわけの分からない言い訳をする。おあいこもへったくれも無いだろう・・・呆気にとられるしかなかった私。別に私は両親に受講料を出してほしかったわけではないが、私にした約束事をそんな簡単に破るという両親に絶望した。私は両親にとってその程度の人間でしかないのか、と。お金が絡むと人間変わってしまう・・・、私の両親の事だろう。フレネミーという造語があるが、ここではペアレミー(ペアレントとエネミーを足した)という造語がぴったりなのかもしれない。

そもそも医療事務の資格を取ることも、母は最初は猛反対していた。すぐにでも正社員で高給取りの仕事を私にして欲しかった。加えて公務員試験を受けろと再三にわたって私に干渉してきたのだ。私は公務員には興味を示さず、事務以外に出来る仕事のスキルを何かつけようとバイトをしながら勉強をしたいと考えていた。それが母にとって気に入らなかったのだろう、バイトは許可できない!バイトなんてしたら正社員で仕事しなくなるでしょ!とのたまい、勉強するといっても「その間の生活はどうするの?」としつこく食い下がる。勉強する間の生活費はそれはバイトで稼ごうかと考えていたので、私が母にそう言っても母の反対から始まって「言うことが聞けないなら出て行け!」となり、いざ出て行こうとすると「出て行かないで!あんたみたいな甘ったれは外で生活できるわけがない」などと意味不明なことを言い出して振り出しにもどるという悪循環がしばらく続いたのだ。そこで私は母に「じゃあどうすればいいの?」と問いかける。すると母は「公務員受けるだけ受けなさい、それでダメなら考えてあげる」と母自身のレールに私を乗せようと必死になっているのだ。暫くその繰り返しだったが、ある日突然母が「医療事務の勉強だったらしてもいい!」と言い出したのだ。本当に突然の出来事だった。そこで何があってこうなったのかを母に訊ねた。すると母の知人の娘さんがある医療事務の学校に勤めているから、と言うのだ。結局私を常に監視下におきたかったのだろう。そして自分だけではなく知人の監視下でも監視が出来る、と思っていたのだろう。母からは勉強するならそこ以外の学校に入ることは許されず、母の知人からも勧誘の電話がしばらく続いたのだ。私も「資格が取れるなら」とそこの学校に入ることになった。そこで前記の両親による受講料の問題が起きたのだ。結局両親は私を裏切り、まさに「口を出すが金は出さない」という態度を見せてくれたのだ。自分の言動に責任を持たない大人が身近にいることが私にとってどれだけ良き反面教師となることだろう。

 

母が亡くなった後に母名義の口座が見つかっている、だがどれが私の稼ぎを貯めていたものなのか分からず、財産分与も無くすべて父の懐に入ってしまった。父も本当にがめついとしか思えない。

 

母は預金や保険が大好きな人だった。お金も好きだった。銀行や郵便局にどれだけ口座を持っていたのだろうと思ってしまうぐらい、口座を持っていた。そして生命保険もなんだかんだで何件もかけていた。そして家にはよく保険の外交員のおばちゃんが出入りしていたものだ。そして気が付いたら保険の証券など何通あるのか、というレベルであった。母曰く「契約しては解約しての繰り返し」だった。母の契約した保険で無事に満期を迎えたもの、恐らく1件も無かったと思われる。